強い企業の条件は?

やっと更新します。
ナマケモノの猫西にゃー太郎です。ナマケモノは非常にストレスに弱いそうです。…近縁種の地上性のナマケモノは絶滅してしまいました。
木の枝で生活する小さな種だけが生存しています。にゃー太郎も絶滅危惧種なので、怠け者といじめないでください…

さて、諸物価高騰の折り「ユニクロ」を売っているファーストリテーリングは3月から国内従業員の年収を最大4割引き上げます。最大4割です。
またパート、アルバイトの時給も引き上げており、国内の人件費はトータルで15%増えることになるそうです。(にゃー太郎も、招き猫でぜひ雇って頂きたいですね)

ユニクロHPより

他の企業は?大企業中心の経済団体、日本経団連はこの春の賃上げ交渉に向けて、「企業の社会的な責務として賃金引き上げのモメンタムの維持・強化に向けた積極的な対応」を会員企業に呼びかけました。
モメンタムとは何ですかね?積極的な対応?猫にはわからん。四の五の言わず、「賃上げできる企業は××%賃金を上げましょう」とユニクロのようにはっきり言って実行して欲しい。

強い企業を見わける方法は?

さて、強い猫と弱い猫は、ニャン相が違います。
ユニクロのような企業、経済環境が厳しい中でも大幅な賃上げができるような強い企業は、他と何が違うのでしょうか?

これを説明する経営学の理論の1つが「VRIO分析」です。Vで、Rで、Iで、Oな企業に競争力があるのです、強いのです。
Vとは、Value(価値)です。
Rとは、Rarity(希少性)です。
Iとは、Imitability(模倣のむずかしさ)です。
Oとは、Organization(組織の強さ)です。

ファーストリテーリング=ユニクロを例にとります。

ユニクロのVRIOとは

【V】はコスパでしょうか?
例えば、ダウン(羽毛)を使ったコート、ジャケット。一昔前は、とても高かったです。(10万円以上しました)
でもユニクロは、原材料の調達先の開拓、海外で安い工賃で商品を作る技術とノウハウ、そして大量生産によるコストダウンにより、1万円台(最近はもっと安い?)のダウンジャケットを売り出しました。
安く、暖かく、しかも軽いとなれば、みんな買います。

【R】は独自の素材技術かな。
暖かいヒートテック素材、涼しいエアリズム素材を東レと共同開発し、衣料の機能性を向上させました。

【I】は日本、そして世界に広がる店舗網が挙げられます。国内のユニクロ店舗は809店、海外は1585店(注1)。もう海外の方が多いのですね。そして、一方でネット通販も拡充しており、リアル店舗と合わせた販売力は模倣困難です。これからカジュアル衣料の製造販売で一から追いつこうとしても、莫大なカネと人材、技術とノウハウが必要です。同じやり方でビジネスを成功させようとしても、勝算はないでしょう。

【O】はSPA=製造小売業という業態をいち早く導入したことでしょう。SPAとは商品(ユニクロの場合はファッション製品ですね)の企画から生産、販売までの機能を統合するビジネスのやり方です。多くの場合、生産設備や物流機能は自社では持ちませんが、ビジネスの実質的な主導権を握っています。
企画→生産→販売までを直結することで、ムダなコストを省き、「これが欲しい」「これが流行る?」という消費者のニーズに迅速に対応できます。
ユニクロを率いる柳井正・会長兼社長の強力なリーダーシップも、組織の強さでしょう。

競争の一時的優位を守り続ける戦い

VRIOによる競争の絶対的優位は、確保しにくくなったといわれています。
かつてアメリカの化学メーカー、デュポンは、「石炭と水からつくられた、クモの糸よりも細く、鋼鉄よりも強い繊維」というキャッチフレーズのナイロンを開発。1940年5月15日、伝線しないストッキングとしてアメリカで売り出したところ、4日間で500万足が完売、初年度だけで6,400万足も売れる大ヒット商品になりました(注2)
その後デュポンは10年以上にわたり、VRIOの塊のようなナイロンで絶対的な競争力と独占的な利益を享受してきました。
しかし、今やライバルメーカーがひしめき合うなかで、そんな他社が追随できない画期的な新技術、新商品を創り出し、長期間、利益を独占できる状況ではありません。
新型コロナのワクチンでも、米ファイザーと米モデルナが同じ構造のワクチン(mRNAワクチン)を出しました。最先端の医薬技術でも、2社が競っています。(日本の医薬品メーカーはどうしたのかな?)

ZARAのHPより

かつてのデュポンのような絶対的優位は難しい。「競争の一時的優位を守り続けていく」。そんな戦略で、ユニクロとZARAは今、世界で戦っています。

(余談です)ユニクロの柳井会長兼社長にかなり前に、取材でお会いしたことがあります。取材の最後に、ユニクロとは全く逆の超高級ファッションブランドに進出する考えはありますか、とお聞きしました。最初は「それはない」、その後、目をつぶりしばし考えていて、「もしやるなら全く違うやり方になるのかなぁ」とつぶやいたあと、「いや、やりません」と言われました。
SPA、ファストファッションにこだわったユニクロはその後、成長が加速していきました。でももし、柳井会長兼社長がそんな高級ブランドを出すとしたら面白いですね、どんなものになるのか。

(注1)2022年8月期の店舗数
(注2)それで5月15日は「ストッキングの日」になりました。ちなみにその当時、アメリカのストッキング市場は日本の絹製品で独占されていましたが、あっという間に王座から追われてしまいました。

猫西にゃー太郎
(本名:西川靖志)

経済系の新聞記者、マーケット・経済専門のCS放送局出演等を経て、現在は経営コンサルタント(中小企業診断士)。ウェブ解析士。無類の猫好き。犬より猫。日本経済の再興を願っています。

ブログは原則週1回のペースで更新いたします(猫は怠け者ですのでたまには…)。 猫故、稚拙な表現やや行き過ぎた個人的意見が入ることもありますが、猫故、お許しください。
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