就業規則に定めのない懲戒処分を受けたときの対処法

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たいへんだーたいへんだー…
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あっ!みなさんこんにちは『まにゃったん』です!…え?何をそんなに騒いでるのかって?…それがね、ちょっと聞いてくださいよっ!…実はまにゃったん、会社で懲戒処分を受けちゃったんです!!
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…っていってもね、ただ会社の猫タワーの3階に登っただけなんだよ…でも会社の決まりじゃ平社員の猫は2階までしか上っちゃダメだったらしくって…それでね、上司の猫に「何で平社員のくせに3階まで上がるんだ!始末書を提出しろ」って怒鳴られちゃって…
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…最初は「始末書ぐらい書いてもいいんだもんっ」って感じで軽く考えてたんだけどね、それが良く聞いてみたら始末書を書くってことは一応「けん責」の懲戒処分に該当するからボーナスとか昇進の査定には響くだろうねって言うじゃない…?
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…でもね、猫タワーの3階に上がっちゃダメだったなんてその時初めて聞いたんだよ?…最初からそういう決まりがあるって知ってたら3階まで上がろうなんて思うはずないんだから、なんか理不尽だなーって今日はご機嫌斜めなの…
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あ~あ~…懲戒処分を撤回してもらう方法ってなんかないかな~
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【就業規則に定めのない懲戒事由で懲戒処分を受けた場合】

就業規則に懲戒事由を明確に定めている会社は多くありますが、就業規則に記載されていない懲戒事由を理由に従業員に懲戒処分を与えるケースが稀に見られます。

ワンマン社長が経営する会社などでよくありがちですが、経営者である社長や社内で権力を持つ管理職が、気に入らない従業員を処分したいがために恣意的に懲戒処分を与えるような場合です。

このようなケースでは、懲戒処分を受ける労働者の側としてはその懲戒処分の対象とされた行為が懲戒事由に該当することをそもそも知らないわけですから、そのような行為を理由に懲戒処分を受け入れなければならないと考えると理不尽にも思えます。

では、このように就業規則に定められていない事由を理由に会社が従業員に懲戒処分を与えることは認められるのでしょうか?

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プロローグ

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うっわ~びっくりしたわ~…なんだ今のくろっつー…?バレリーナみたいな恰好して立ってたぜ?……
あっ!トルティーヤ先生!!
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ん?なんだ?くろっつーか?
くろっつー?…なんですかそれ…ま、いいやそんなことより…トルティーヤ先生ちょうどよかった…あのね実は私、会社で「けん責」の懲戒処分を受けちゃったんですよ…
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…でもね、猫タワーの3階に登ったからっていうのがその理由らしいんだけど、そんなの初めて聞いたんですよ…あらかじめ「猫タワーの3階に登るな」って言ってもらえてたら登らなかったのに、知らずに上ったら懲戒処分だなんて…ひどいと思いません?
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なんだよ…くろっつーじゃねーのかよ…で何?猫タワー…?あ~あの部屋の中に置いとく猫用のジャングルジムみたいなやつね…で、なんで3段目まで登っちゃいけないの?…え?…猫って課長以上じゃないと2段目より上に登っちゃいけないんだ…へ~…チンパンジーにそんなルールはないけどね…ふ~ん…猫っていろいろ大変なんだね~…
…で、こういうのって認められていいもんなんですかね?…だって「猫タワーの3階に登ったらダメ」なんていう決まりがあるなんて知らなかったんですよ?…それなのに「課長以上が3段目に登っちゃいけないのは常識だろう!」って言われて「けん責」の懲戒処分で始末書まで書かされて…なんか納得いかないんだよな~…
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まぁ、法的に考えるとその懲戒処分は違法になるだろうね…
え?そうなんですか…?
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会社が労働者に懲戒処分を行うための要件

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うん…一応念のために聞いておくけど、『まにゃったん』がその「課長以上の猫しか3階に登っちゃダメ」っていう会社の決まりを知らなかったっていうのは就業規則に「課長以上の猫しか3階に登っちゃダメ」っていうことが懲戒事由として明記されていないってことでいいんだよね?
う~ん…どーだろ…就業規則ってみたことあるのかな~…?
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会社の懲戒処分の有効性を判断する際には、その懲戒処分を受けた懲戒事由が就業規則に明確に記載されていたかっていう点はとても重要になるんだよ。だから『まにゃったん』が「猫タワーの3階に登った」っていう理由で懲戒処分を受けたっていうんだったら「課長以上でない社員が猫タワーの3段目に登った場合はけん責に処する」っていう懲戒事由と懲戒処分の内容が明確に就業規則に記載されていたのかっていう点をまず確認する必要があるんだよね。
…ってことは、もしも就業規則に「課長以上の猫しか3階に登っちゃダメ」っていうことが懲戒事由として定められていなかったとしたら、『まにゃったん』が受けた懲戒処分は違法な懲戒処分ってゆーことになるの?
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そうだね…え~っと…会社が従業員に対して懲戒処分を行う場合に必要な要件は労働契約法の第15条で規定されているんだけどね、そこでは「使用者が労働者を懲戒することができる場合」に限って会社が労働者に懲戒処分を下すことができるって規定されているんだ。

労働契約法第15条

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

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この条文を見てもわかるように、会社(使用者)が労働者(従業員)に懲戒処分を与えた場合であっても、その懲戒処分が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当」と認められない場合はその懲戒処分は「無効」って判断されることになるんだけど…
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この条文の先頭に「使用者が労働者を懲戒することができる場合において」っていう文章が入れられている以上、その懲戒処分の有効性の判断はあくまでも「使用者が労働者を懲戒することができる場合」に限って行われるってことになるんだ。つまり、仮にその懲戒処分に「客観的合理的な理由」や「社会通念上の相当性」があったとしても、「使用者が労働者を懲戒することができる場合」において懲戒処分がなされていない限り、その懲戒処分は「無効」と判断されることになるんだ。
ん?…なんかこんがらがってきた…どーゆー意味?
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簡単にいうと、会社は「使用者が労働者を懲戒することができる場合」でなければそもそも懲戒処分自体をしてはいけないってことだよね。労働者がいくら悪いことをしたとしても「使用者が労働者を懲戒することができる場合」じゃなかったら会社はその労働者に懲戒処分を出したらダメっていうことなんだ。

会社には当然に「懲戒権」を行使できるわけではない

じゃあ、その「使用者が労働者を懲戒することができる場合」ってゆーのは具体的にどうゆー場合をいうんですか?
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「使用者が労働者を懲戒することができる場合」っていうのは、具体的には「就業規則に懲戒事由が明確に定められている場合」を指すって一般に考えられてるんだ。
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なんでそういう風に考えられているかっていうと、会社が労働者に懲戒処分を与える根拠となる「懲戒権」は労働契約上当然にその行使が認められているのではなく、就業規則に具体的な懲戒事由を定めることによって初めて会社にその「懲戒権」を行使することが認められると考えられているからなんだ。
会社には労働契約上当然には「懲戒権」の行使が認められていない?…どーゆーこと?…本当は会社には「懲戒処分」を下す権限は認められていないってこと…?
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当然には「懲戒権」の「行使」が認められないってことだね。会社に「懲戒権」が与えられる根拠がどこにあるかっていうと、過去の判例では、会社が企業活動を行うためには労働者の能力を最大限利用して最大の利益を出すことが目的となるから、その労働者をある程度管理し「企業秩序を維持して企業の円滑な運営を図ること」が必要になるっていう点に求められると考えられているんだ(関西電力事件:最高裁昭58.9.8)。

関西電力事件:最高裁昭和58年9月8日

…労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守すべき義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、もって企業の円滑な運営を図るために、その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し、一種の制裁罰である懲戒を課することができる…

※以上、関西電力事件:最高裁昭和58年9月8日より引用(抜粋)

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これが「企業の秩序を維持するための権限」とかいわれるもので、会社と労働者が労働契約(雇用契約)を結んだ時点で当然に会社に認められることになるんだけどね…その「懲戒権」は労働契約上当然に認められる「企業の秩序を維持するための権限」に含まれると考えられるから、会社が労働者と労働契約(雇用契約)を結んだ時点で会社は当然に「懲戒権」を取得することになる。ただ、その「懲戒権」を「行使」する権限までを当然に認めてよいのかっていう点には争いがあるんだ。
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だって、「企業の秩序を維持するための権限」の中には当然、「従業員の昇進の可否や賞与の金額を査定する権限」も含まれるから、会社が特定の労働者に対して何らかの「制裁」を加えたいんだったら、その「企業の秩序を維持するための権限」に含まれる「従業員の昇進の可否や賞与の金額を査定する権限」とかの通常の制裁権を行使してその対象となる労働者の評価を下げて昇進を抑えたり賞与の金額を抑制したりすることができるわけだからね。
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企業の秩序を維持するために労働者に制裁を加える必要がある場合は、そういった「企業の秩序を維持するための権限」として通常使われる「従業員の昇進の可否や賞与の金額を査定する権限」とかを行使すれば済むわけだから、なにも会社が労働者に特別な「罰」を与える「懲戒権」の行使まで認める必要はない。だから労働者に特別な「罰」を与える「懲戒権」は、会社が労働者との間で結んでいる労働契約(雇用契約)上は当然には行使することができないって考えられてるんだよ。
う~ん…なんか難しいけど、よーするに、会社が雇ってる従業員に何か制裁を与えたいんだったら「昇給させない」とか「ボーナスを減らす」とかいった感じで会社が通常行使している処分権限を使えば済む話だから、特別な「罰」を与える「懲戒処分」をする必要はない…だから「懲戒処分」を与える「懲戒権」自体も、会社が従業員と労働契約(雇用契約)を結んだだけでは当然には行使できないってゆーことになるんですよね。
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そうだね。ただ、そうはいっても時には労働者が通常考えられないようなミスを犯したり故意に悪いことをして会社に損失を与えてしまうことも現実の社会ではあり得る話だから、そういった労働者に特別な「罰」を与える必要が生じる場合もある。だから「あらかじめ就業規則に懲戒事由を規定した場合に限って」そのあらかじめ就業規則に規定した懲戒事由を理由とする懲戒処分、つまり会社の「懲戒権の行使」を認めようと考えられて作られたのがさっき説明した労働契約法の第15条なんだよ。
あ~…だからさっきの労働契約法第15条の文頭に「使用者が労働者を懲戒することができる場合において」っていう文章が入れられてるんですね?
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そうだね。会社の「懲戒権」は労働契約上当然に行使することが認められるわけではなく、「あらかじめ就業規則に懲戒事由を明確に規定した場合」に限ってその行使が認められることになる。だからわざわざ労働契約法の第15条の最初に「使用者が労働者を懲戒することができる場合において」っていう文章を挿入したって考えられてるんだ。
なるほどね~…
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ちなみに過去の判例でも会社が従業員に「懲戒処分」を行う場合は「規則に定めるところに従」う必要があるって判断されているから(国鉄札幌運転区事件:最高裁昭54.10.30)、仮にこの労働契約法の第15条の規定がなかったとしても懲戒事由が具体的に就業規則に記載されていない限り、会社が「懲戒権」を行使して懲戒処分を行うことはできないと考えられているんだ。

国鉄札幌運転区事件:最高裁昭和54年10月30日

…これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができるもの、と解するのが相当である。…

※以上、国鉄札幌運転区事件:最高裁昭和54年10月30日より引用(抜粋)

それに、法律でも会社が労働者に懲戒処分を与える場合はあらかじめその懲戒処分の種類とその程度に関する事項を就業規則に明確に定めて労働基準監督署に提出することが義務付けられているから(労働基準法第89条第9号)、就業規則に規定のない懲戒事由で懲戒処分を下すこと自体労働基準法違反ってことになる違法な行為ってことになるんだよね。

労働基準法第89条

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない

第1号~第8号(省略)
第9号 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
第10号(省略)

就業規則に定められていない懲戒事由を理由とする懲戒処分は無効

なるほど~…じゃあ、就業規則に懲戒事由が明確に定められていないのに会社が懲戒処分を行った場合はどーなるんですか?
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その場合はさっき挙げた労働契約法の第15条に基づいて、会社が「懲戒権」を濫用したものと認定されて「無効」と判断されるだろうね。ここまで説明したように就業規則に「懲戒事由が明確に記載されていない」場合は労働契約法第15条の「使用者が労働者を懲戒することができる場合」にあたらないわけだから、そもそもその会社はその懲戒事由について懲戒権を行使できる権限を有していない。だから、その懲戒処分に「客観的合理的な理由」や「社会通念上の相当性」があったかなかったという点を判断するまでもなく、その懲戒処分は権利の濫用として無効と判断されることは間違いないだろうね。
う~ん…じゃあ、私の場合も就業規則を確認して、もし「課長以上でない社員が猫タワーの3段目に登った場合はけん責に処する」っていう懲戒事由と処分の内容が明確に定められていなかったとしたら、労働契約法第15条の「使用者が労働者を懲戒することができる場合」にあたらないと考えてその懲戒処分は無効になるってことになるんですか…?
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